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1週間ほどぶりに来た家。
鍵が変わってたらどうしようとかも思ったけど、それは大丈夫で安心した。
中に入ると、特に大きく荒れている様子もないけど、食器が少しシンクに残ってたり、脱いだ服がリビングに散らばっているのを見ると帰っては来てるんだと思う。
私が置いたメモはなくなっていた。
「ある程度要るものはまとめてて、後は運ぶだけって感じなんですけど…」
岩「了解。手伝うよ」
「ありがとうございます
こっちです、私の部屋」
岩「…」
「?どうかしました?」
岩「いや、女性の部屋にズカズカ入って良いのかなって…」
ドアの前でひかるさんは固まってる。
私がお手伝いを頼んでいる立場で、自室に入られたからって怒るわけないのに!
体は大きいのに様子を伺う感じは小さな子どもみたい。
「もう使ってませんし、思い入れも何もないただの部屋なんで。どうぞ」
遠慮してるひかるさんの腕を引いて部屋に引き入れた。
掴んだ腕はガッシリしてて、さすが消防士さん。
「そこの段ボールと、あとこの電子ピアノとドレッサーを持って行きたいんですけど…大丈夫ですか?」
岩「うん。大丈夫。
ピアノとドレッサーは業者にお願いしようか」
「いつもお願いしてる人が居るから…」とすぐに手配してくれて、なんと今日中に届けて貰えるらしい。
一度段ボールとキャリーケースを置きにシェアハウスに帰ってからここへ戻って来たら丁度立ち会いの時間で、効率的だなって驚いた。
岩「おっきい車で来て良かったね」
「はい。本当にありがとうございます…貴重なお休みに…」
岩「大丈夫。気分転換も必要だから」
そう言ってにこって笑ってくれたひかるさんは、荷物を運ぶだけじゃなくてピアノやドレッサーの搬入も手伝ってくれて、カーテンやベッドなど新しい生活に必要なものを選ぶのも付き合ってくれた。
休憩にタピオカドリンクを飲む午後3時。おやつ時。
ふと、これっておめかし案件だったんじゃ…?なんて思うけど。
「…」
岩「?なに?」
「いえ…」
ひかるさんはただの人助けくらいの感覚だと思うから。
岩「んふ デートみたい」
「んっ…!」
岩「えっ、大丈夫?」
タピオカがつるんって喉奥まで滑り込んで来て死ぬかと思った。前言撤回。やっぱりおめかし案件だったかも。
気付いてないフリしてたけど、実はさっきからすごく視線を感じていて。
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作者名:あむ | 作成日時:2024年4月5日 23時