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佐久間side。
.
結局…駅に着くまで声を掛けらんなくて、みどり先生と2人が別れる直前、改札に向かいそうになるところで慌てて呼び止めた。
「みどり先生!」
みどり「あれ?佐久間先生?」
「これ!先生のでしょ?」
みどり「あ!自転車の鍵!最寄駅に停めて来たのよー
危うく歩いて帰るとこだったね」
ありがとうーってにっこり微笑むみどり先生は、もうすっかりいつもの先生。
みんなのお母さんみたいな俺らの大先輩。
阿「ごめん佐久間。電話全然気付いてなかった」
椿「私も…」
「んにゃ、間に合ったからいいってことよ〜」
みどり「今度美味しいおやつ持ってくね
佐久間先生だけ2つあげる」
他の先生には内緒ねってイタズラに微笑む先生。
その笑顔は阿部ちゃんとよく似てて、さすが親子。
今度こそ改札をくぐって先生は帰ってった。
阿「佐久間走って来たの?よく追いついたね」
「まあねぇ」
ほんとはもうちっと早く追いついてたんだけどねーなんてことはもちろん言わない。
「…」
椿「ん?」
にこって笑って俺を見上げるAちゃん。
目尻がほんのり赤いの、気付いてないんだろうな。
椿「さっくん?」
無意識だった。
吸い寄せられるみたいに彼女の頭に手を乗せていて。
「…ほこり、ついてた!」
苦しい言い訳で誤魔化した。
椿「あ、ほんと?ありがとう〜」
ふんわり笑うAちゃんにホッとした。
下手くそな誤魔化しがバレなくて…だと思う。
阿「俺達も帰ろうか?」
椿「そうだね」
顔を見合わせて笑い合う2人の距離が、なんとなく近くなったような気がしてモヤモヤした。
「…アイス食べて帰んない?」
もうすぐ梅雨が来るから…そのせいだ。
ジメジメが迫って来てるような気がするのは。
椿「今日暑いもんね」
阿「コンビニ寄って帰ろうか」
「そういえばこの間ね…」ってふっかとコンビニで遭遇した時のことをクスクス笑いながら話すAちゃんは、この1ヶ月でいつの間にかシェアハウスのみんなと打ち解けていた。
あれ?って気付いた時には溶け込んでて…
それぐらい自然だった。
陽だまりみたいにポカポカした彼女が、
『
「…佐久間とも遊んでね」
椿「えぇ?こちらこそだよ」
ずっと友達で居てよ。
そう思って、言わなかった。
だってなんか…しっくり来なかったから。
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作者名:あむ | 作成日時:2024年4月5日 23時