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さっくんの服を借りていた間に洗濯と乾燥にかけた自分の服に着替えて、軽く身だしなみを整える。
めかし込む道具もなければ時間もないし、そもそもめかし込むような予定ではない。



岩「そろそろ行こっか。出れる?」

「はい。ありがとうございます」

向「行ってらっしゃーい」



「気をつけてな〜」ってお腹がいっぱいになってまた眠たくなったのか、ふあ…って欠伸をした康二くんの見送りのもと、ひかるさんと駐車場まで歩く。
やっぱり今日は良い天気で、9時だというのにもう既に日差しが暑いくらい。



岩「桜…散っちゃったね」

「そうですねぇ…」



家の前の公園の大きな桜の木。
今では黄緑の葉っぱがサワサワと風に揺れている。


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駐車場に着いて、当たり前のように助手席のドアを開けられてドキッとした。
さっくんもだけど、こういうエスコートというか…紳士的な振る舞いをどうしてみんなこうも簡単にやってのけるんだろう。

異性の運転する車なんて、ここ最近はさっくんのしか乗って無かったから、広いとは言えない空間に2人きりで少し緊張する。



岩「じゃあまずホテルから行く?」

「…はい」



ひかるさんに他意は無いのに。
私が変に意識しちゃってたから邪な意味に聞こえて勝手に気まずい。



岩「…そんな萎縮されるとこっちも緊張するから」

「あ、や…ごめんなさい!」

岩「ふふ 別に拐ったりしないから」

「私ごときがひかるさんに拐われるなんて烏滸がましいです…」

岩「なにそれ」



ひかるさんがクスクス笑ってくれて、肩の力が少し抜けた。普段凛々しい表情をしているからこうして笑顔を見ると癒されるというか…気が抜ける。
笑うとすごく可愛らしい。

泊まっていたホテルに送って貰って、キャリーケースにまとめた荷物を持ってチェックアウトを済ませた。
期間限定とはいえ、仮にも我が家だったのに最後はアッサリ終わってしまった。
勿論、思い出も心残りもなんにもないんだけど。



岩「じゃあ次は荷物だね
…今の時間帯なら大丈夫?」



その言葉が元彼のことを気にしてくれているというのはすぐに分かった。
彼は仕事を投げ出すような人ではないし、私が出て行ったくらいでおかしくなっちゃうとも考え難い。
だって新しい相手がいるくらいだもん。



「大丈夫です」



そう頷くと、「じゃあナビよろしくね」ってひかるさんは優しい声色で言った。

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作者名:あむ | 作成日時:2024年4月5日 23時

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