一年目、春休みの話。 ページ1
わたしことクォーツ・トレーフルはグロリアス高等魔法学園の先生になった。錬金術の教員として。
夢じゃないかなと思うけど、夢だったら困ると思い直す。
久々に学園に入ると、春休み中だからか生徒の姿は見えなかった。
懐かしい校舎に、内心で感動を覚える。
ふと視線を感じて目線を校舎から下げると黒い人が居た。
「……見ない顔ですね。新しい方ですか」
冷ややかな声で中々に塩対応だが、どうやら彼は教員のようだ。
「(仮面でめっちゃ怪しい……!)」
彼は髪も服装も真っ黒で背がすごく高くて、目元が黒い仮面で覆われていた。
自分が生徒だった時には居なかった先生だ、と驚く。
「学園を訪れたのは初めてですか?」
「い、いいえ。以前ここに通っていたので」
「そうですか。案内は必要ですか」
「あ、校長先生に挨拶をしたくて……」
「校長室ですか。案内いたしましょう、丁度暇でしたので」
「ありがとうございます」
背の高い人はモリオン・ヘッケンローゼと名乗った。占星術の教員らしい。
「(占星術……わたしと縁のなかった授業だ)」
艶やかな黒髪を見つめながら彼の後を追う。さらさらしていて指通りが良さそうだ。
校長室に着くと、人が待っていた。
「あ、あれ? クォーツちゃん?!」
「わ、アウインちゃんじゃん」
見ると同級生だった子がそこに居る。
「知り合いですか」
「あ、はい。同級生の子で……」
ヘッケンローゼ先生の言葉にわたしは頷いた。
アウインちゃん、じゃなくってミオソティス先生、になるのかな。どうやら、魔法史の先生になるらしい。
ともかく、同級生だった彼女は昔から変わらない、人形みたいな可愛い姿だ。私服もレースがたっぷりでさらに人形みたい。
「すごい偶然だ!」
「本当!」
嬉しくなっていると、ヘッケンローゼ先生が咳払いをした。そうだ、ここ校長室だ……少し気まずくなる。
それから少しして校長先生がが現れた。
「では、私は失礼します」
とヘッケンローゼ先生は退出しようとする。
「案内ありがとうございます」
「いいえ、礼には及びません」
頭を下げると、彼は素っ気なくそう返して校長室から出て行った。
×
校長先生との挨拶を済ませて、職員寮の部屋の鍵を受け取る。
「ふう、緊張した……」
「どきどきしちゃった」
晴れて新米教員となったわたし達2人は、顔を見合わせた。
これからグロリアス高等魔法学園の教師として、頑張らなくちゃ。
色々不安な気持ちでいっぱいだけど、楽しみでもあった。
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作者名:鬼灯 | 作成日時:2024年4月10日 14時